教科書の厚さを倍増、自習にも対応…改革素案が明らかに

 政府の教育再生懇談会(安西祐一郎座長)が、小中高校の教科書の質と量の充実を図るためにまとめた教科書改革の素案の全容が26日、明らかになった。

 これまで一般的だった教室での使用を主目的とした分量の薄い教科書から、「自学自習にも適した教科書」に性格を変えようとするのが特徴だ。特に、国語、理科、英語では、名文の引用や練習問題を豊富にし、総ページ数を2倍に増やす必要がある、としている。

 懇談会は、学力低下を招いたと批判される「ゆとり教育」から転換を図る取り組みとして、28日から素案をもとに具体的な検討に入る。

 日本の教科書の分量は元来、「欧米諸国に比べて格段に少ない」(文部科学省幹部)とされる。約10年前から始まったゆとり教育はこれに拍車をかけ、2002年使用分を最低に、小中学校の多くの科目で総ページ数がかなり減った。

 関係者によると、福田首相も最近、近年の教科書の薄さに懸念を示したという。

 素案は、この点について「教科書が、教室で授業を受けながら使うことを前提に作られている」と指摘し、授業だけでなく、児童・生徒が自習する際にも一人で理解できるよう、丁寧に記述するよう求めた。

 特に、国語や英語では、文豪や哲学者の名文や演説などを豊富に盛り込むよう提案。合わせて、理数系の学力低下が著しいため、算数・数学の練習問題を多くするほか、理科のテコ入れの必要性も指摘した。

 また、学習指導要領の範囲を超え、上の学年で学ぶ内容を先取りする「発展的記述」に関する文科省の指針について、小中学校での上限を「全体の1割」、高校では「2割」としている規定を撤廃するよう求めた。出版社が柔軟に編集できるようにするためだ。

 素案は、こうした改革を実現するため、国語、英語、理科の3教科について、「2倍のページ数が必要」と具体的目標を掲げた。

 新学習指導要領が2011年度から小学校で全面実施され、新しい教科書の準備が間もなく始まることから、懇談会は今秋にも予定される第2次報告にこの改革を盛り込む方針だ。
[読売新聞]